山内マリコさん『ここは退屈迎えに来て』=地方生まれ、なじめない心情=【好きな本】

こんばんは。
心理カウンセラーの緒山(おやま)まりこです。

ひさびさに掘り起こした、好きな本・推し本の紹介シリーズ。
シリーズというか、1冊しか紹介していない…!ギクリ。

そんな心変わりは日常茶飯事。気分になったので、また綴ります。
帰省の季節なので、地方生まれの心情に合いそうな小説を。

今回は、
山内マリコさん『ここは退屈迎えに来て』 をご紹介します。
*出版社サイトはこちら

今回の帰省のお供に。

地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、R-18文学賞読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。

『ここは退屈迎えに来て』著者 山内マリコ/幻冬舎 作品紹介より引用

「マリコ」被りなのはたまたまですー。

読み返してみて、こんな人↓には特にオススメしたいなと思いました^^

  • 地方の生まれで、そこに馴染めない感覚がある(ずっと地元に居る、Uターンした、短編なので色々なパターンの話あり)
  • ここに居るけど傍観者のような目線を抱いている
  • 地方における多数派(と思われる)ではない人生を送っている意識がある

山内マリコさんとの初めて出会ったのは、東日本の震災復興チャリティ同人誌『文芸あねもね』。
こちらに集結したのは、“女による女のためのR-18文学賞” に由縁のある作家さん。

今活躍なさっている作家さんがたくさん、豪華なメンバー!

私の大好きな山本文緒さんがこの文学賞の審査員をなさっていて、この同人誌にも参加されていたのです。
他の参加作家さんは、当時は駆け出し、今となっては映像化した作品を書かれている方も多い、そんなアンソロジーです。

山内マリコさんもそのおひとり。この同人誌に収録された短編は、デビュー作『ここは退屈迎えに来て』にも収録されています。

ここは退屈迎えに来て

タイトルを語らせて

タイトル、すごく好きなのです。

これは、このタイトルだけ単独で心理学的にコメントすると
お迎えを待っていないで、自分で動かなきゃ!( = 依存しない王子様を待っていても来ないよ。)」

と、なるのかと思うのですが、気になるのは「どれくらいの本気度で言っているのか?」というところ。

“お迎えが来る” という現実度。
(短編の主人公たち)の現実に、そんなドラマがいきなり降ってくるか。おそらく本気では思っていない。

若き頃は、自分が動くことで叶えられるだろうという、若さゆえの希望はあれども。
年齢が上がっていくにつれて、選択肢がしぼられてきて、現実が見えてくる。

それを叶える人もいるけど、全員がそうなれる訳ではなく。
おそらく “叶った側ではない、と思っている人” が共感しやすい小説。(私もこちら側)

舞台として思い浮かぶのは、のどかで少し寂れていて、でも僻地でもない、そんな見たことのあるような地方の風景。そんな背景のロードムービーでは、王子様が迎えに来て、人生が一気に花開くどんでん返しが起きるのか。
*ちなみに、この小説は映画化もされています。

ほんの少しだけ、そんな言葉をつぶやくくらい、いいじゃない。ここで生きていくのに、それくらい自由にさせてよ。本気で言っていないし。ここに居て、いいことや幸せがあることも知っているし。

はい、タイトルだけで約600字も語っています。

※ここから先は「これから読みたい」という方には、ネタバレになるかもしれません。
 読み進めてくださる場合は、その可能性をご了承くださいませ。

地元の男「椎名」

連作の短編が収録された本作。
どの短編にも出てくる登場人物「椎名」。

学生時代はキラッキラのいわゆるカースト1軍の男。
でも、歳を重ねていき、各短編の主人公からの目線で見る椎名は、輝いている男という訳ではなく。

放課後の青春、持っている側・キラキラしている、椎名。
婚活中の女から見た、まぁ悪くない、椎名。
淡々と仕事をしてテレビを見て、妻子と暮らす、椎名。

子どもの頃にかっこいいなぁと思っていた男の子に遭遇した感じ。なんだかリアルな椎名。
なお、椎名は地元に馴染み日々を生きていて、何か違和感を持っている感じではない。(ちなみに椎名は地元の外に出て、戻ってきます)

地元に馴染めない側からすると、対となる存在なのかもしれない。

好きな話

私が特に好きな収録作品は、『私たちがすごかった栄光の話』。

地元からわざわざ東京(県外)に出ていく人の気持ち。

ここ(地元)が私にとって居心地のいい場所だったら、出て行かないよ。
そして出ていっても、なにも得られないまま帰ってきたり、漂っている。

なんでここにいるんだろう、そんな感覚。

あとは、『君がどこにも行けないのは、車持ってないから』。

タイトルの通り。(これもタイトルが好き案件)
車が無いから。だから私は、どこにも行けない。運転ができるようになったら、どこにでも行ける。

収録された短編のほとんど(女子高生メインの話を除く)に車が出てくるのが印象的。
そう、「運転ができないこと = 自分の行きたい場所に行けない」なのよね。車社会の地方だと。

書籍タイトルの「迎えにきて」は、車にもかかっているのかも。と、書きながら思いました。

ちなみに、椎名の職業は教習所の教官。キーパーソンが車・運転に関連しているという。

▼そして私は、ペーパードライバー講習を受けても運転ができない

***

著者の山内マリコさんは富山県ご出身、他の作品でも地方の情景を描かれています。地方出身の方は、共感するお話が多いと思います。
気になる方はぜひ読んでみてくださいね(^^)

ということで、今回は推し本のご紹介でした!
またお会いしましょうね^^

緒山 まりこ

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